訪問看護で介護保険を使うには?費用・対象者・始め方を解説

この記事では、対象になる人・費用の目安・利用を始める手順を、私が現場で実際に使っている順番で整理します。医療保険との違いや、対応してもらえないことまで正直に書きます。
私は看護師歴15年、うち訪問看護10年。ステーションの開設から運営までやってきました。教科書ではなく、申請窓口で詰まりやすい所を中心にお伝えします。
訪問看護の介護保険とは?まず知っておきたい基本

訪問看護とは、看護師などが自宅に伺い、療養上の世話や医師の指示にもとづく診療の補助を行うサービスです。要支援・要介護認定を受けた人には、これが介護保険から給付されます。
制度上の定義はシンプルで、「居宅における療養上の世話または必要な診療の補助」と整理されています。つまり、病院でやっていたケアの一部を、生活の場で続ける仕組みです。
訪問看護で受けられるサービスと訪問する人
訪問するのは看護師や准看護師が中心です。事業所によっては理学療法士などのリハビリ職も伺います。
内容は、血圧や体温などの病状観察、清拭・洗髪といった療養上の世話、服薬管理、点滴や褥瘡(じょくそう=床ずれ)の処置などです。生活の様子を見ながら、医療と暮らしの橋渡しをするのが役割です。
訪問看護を利用できる対象者
介護保険で訪問看護を使えるのは、原則として次の人です。
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| 65歳以上 | 要支援または要介護の認定を受けた人 |
| 40〜64歳 | 16の特定疾病に該当し、要支援・要介護認定を受けた人 |
40代・50代でも、がん末期や初老期の認知症などの特定疾病に当てはまれば対象になります。「介護保険=高齢者だけ」と思い込んで諦める人がいますが、ここは確認してほしいところです。
在宅看護・訪問介護との違い
よく混同されるのが訪問介護です。訪問介護はホームヘルパーが行う生活援助や身体介護で、医療行為はできません。
対して訪問看護は、看護師が医療的なケアを担います。点滴や床ずれの処置、医師の指示に基づく管理は訪問看護の領域です。在宅看護は自宅で療養すること全般を指す広い言葉で、その中の専門サービスが訪問看護、と整理すると分かりやすいです。
訪問看護で使う保険は介護保険と医療保険のどちら?
ここが一番つまずく所です。原則は介護保険が優先。要支援・要介護の認定があれば、まず介護保険を使います。

ただし例外があり、一定の条件では認定があっても医療保険になります。判断を間違えると請求がやり直しになるので、ケアマネジャーや事業所と必ず確認してください。
介護保険が適用される場合
要支援・要介護認定を受けていて、後述の医療保険の例外に当たらない場合は介護保険です。ケアプランに訪問看護を組み込み、支給限度額の範囲で利用します。
訪問時間は20分未満、30分未満、30分以上60分未満、60分以上90分未満の区分で設定します。
医療保険が適用される場合
認定があっても医療保険になるのは、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合、急性増悪で頻回の訪問が必要な場合、精神科訪問看護の対象などです。
医療保険では1回30〜90分が基本で、訪問は通常週3回まで。特定疾患などでは週4回以上が認められます。重症の場合は90分を超える長時間の訪問もあります。
保険の種類で訪問頻度が変わる
頻度の考え方が両者で違います。ここを表で見比べてください。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 訪問時間 | 20分未満〜90分未満の区分 | 1回30〜90分が基本 |
| 訪問回数 | 一律の上限なし(ケアプランと支給限度額の範囲) | 通常週3回まで(特定疾患等は週4回以上可) |
介護保険は回数そのものに一律の上限がない一方、限度額の枠で縛られます。週何回も入りたいケースは、限度額を意識した組み立てが要ります。
介護保険と医療保険の併用・切り替えの判断基準と具体例
基本は「どちらか一方」です。同じ訪問看護で両方を同時に使うわけではありません。
切り替えが起きる典型は、がんが進行して末期と診断された時です。それまで介護保険で入っていた人が、厚労省の定める疾病等に当たることで医療保険へ移ります。私の現場でも、状態が変わったタイミングで主治医・ケアマネと三者で確認し、切り替えの判断をしてきました。
訪問看護の費用と自己負担の目安
気になる費用です。介護保険の訪問看護は、自己負担が所得に応じて1〜3割。多くの方は1割で、残りは保険でまかなわれます。

正直に言うと、金額は介護度・訪問時間・加算で動くため「一律いくら」とは言い切れません。仕組みを押さえれば見通しは立ちます。
看護内容・介護度による費用の違い
費用は訪問の長さと内容で変わります。20分の処置と、60分かけた全身ケアでは単価が違います。
さらに状態に応じた加算が乗ります。だからこそ、最初に「どのくらいの頻度・時間で入るか」をケアプランで詰めることが、費用の予測精度を上げる近道です。
介護保険の自己負担割合と訪問看護費
自己負担は所得区分で次のように分かれます。基本は1割です。
| 所得区分 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 一般的な所得 | 1割 |
| 一定以上の所得 | 2割 |
| 特に所得が高い | 3割 |
月額は1割が基本で、所得に応じて2〜3割に上がります。前述の日本訪問看護財団の整理でも同様です。
区分支給限度額を超えた場合の費用
見落とされがちなのがここ。介護保険には介護度ごとに月の支給限度額があり、訪問看護もその枠に含まれます。
限度額を超えた分は、全額自己負担になります。デイサービスや訪問介護も同じ枠で取り合うので、サービスを詰め込みすぎると枠を超え、思わぬ出費になります。私が利用者家族に必ず伝える注意点です。
費用負担を軽くする制度(高額介護サービス費など)
自己負担が重くなった月は、高額介護サービス費で一定額を超えた分が払い戻されます。所得に応じた上限額が決まっています。
医療保険側で訪問看護を使う場合は高額療養費の対象です。自治体独自の助成がある地域もあるので、住んでいる市区町村の窓口で確認してください。制度は申請しないと戻りません。
訪問看護介護保険の始め方と申請の手順

「どこに相談すればいいか分からない」という声が一番多い。答えはシンプルで、まず要介護認定とケアマネジャーから始まります。
流れを知っていれば迷いません。私が実際に案内している順番で示します。
ケアマネジャーへの相談から利用開始までの流れ
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 市区町村の窓口で要介護認定を申請する |
| 2 | 認定後、担当のケアマネジャーを決める |
| 3 | ケアマネに訪問看護を使いたいと相談する |
| 4 | 主治医から訪問看護指示書を出してもらう |
| 5 | 訪問看護ステーションと契約し、訪問開始 |
認定がまだの人は、ここで日数がかかります。退院に合わせたい場合は、入院中から病院の地域連携室に相談しておくと間に合わせやすいです。
主治医意見書・訪問看護指示書の取得手順
認定の審査では主治医意見書が使われます。これは市区町村が主治医に依頼する書類で、利用者側で取りに行くものではありません。
一方、訪問看護を実際に始めるには訪問看護指示書が必須です。これは主治医が訪問看護ステーション宛てに出す指示書。指示書がないと一回も訪問できません。ステーションが主治医とやり取りして取得を進めるので、利用者は「主治医は誰か」を伝えればだいたい回ります。
ケアプランにおける訪問看護の位置づけ
訪問看護はケアプランの一部として組み込まれます。訪問介護やデイサービスと、限度額の枠を分け合う関係です。
私の経験では、医療的なケアが必要なら訪問看護を軸に置き、生活援助を訪問介護で補う組み立てが安定します。ケアマネと「何を優先するか」を最初にすり合わせておくと、後で枠が足りなくなる事態を避けられます。
失敗しない訪問看護ステーションの選び方
事業所選びで後悔する人は少なくありません。訪問看護ステーションの指定有効期間は6年で更新制ですが、長く続いている=合うとは限らない。

見るべき所は3つに絞れます。対応エリア、夜間対応、得意分野です。
対応エリアと24時間対応の有無
まず自宅が訪問エリアに入っているか。エリア外だと、そもそも契約できません。
次に24時間対応の有無。夜間に容体が変わりやすい状態なら、電話一本で看護師が動ける体制があるかは命綱です。看取りを視野に入れるなら、ここは妥協しない方がいい。
得意分野・口コミの確認ポイント
事業所には得意分野があります。がん末期に強い所、認知症ケアに慣れた所、小児に対応できる所。状態に合う実績があるかを契約前に聞いてください。
口コミは参考にはなりますが鵜呑みは禁物。私の感覚では、ケアマネが複数の事業所を知っているので、「この状態ならどこが向くか」を聞くのが一番確かです。
トラブル・苦情時の相談窓口
合わないと感じたら、事業所を変えられます。契約は解除できますし、無理に続ける必要はありません。
まずは担当ケアマネに相談。それでも解決しない場合は、市区町村の介護保険担当課や、各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)が苦情相談を受け付けています。我慢して抱え込まないでください。
目的別に見る訪問看護の活用例
訪問看護は「どんな目的で使うか」で形が変わります。退院直後、認知症、看取り、家族の休息。私が実際に関わった場面で説明します。

前述のとおり提供できるのは療養上の世話と診療の補助。その範囲で、場面ごとに重点が変わります。
退院後の在宅復帰と医療機関との連携
退院直後は最も不安定な時期です。点滴や創部の管理が残ったまま帰宅するケースも多い。
このとき訪問看護が、病院と在宅の橋渡しをします。退院前カンファレンスに看護師が同席し、病院の指示を引き継ぐと、自宅でのケアが途切れません。入院中から動くのが理想です。
認知症の方への支援内容
認知症では、服薬の管理が一番の課題になりがちです。飲み忘れ・飲みすぎを防ぐため、訪問のたびに薬の状態を確認します。
加えて、本人の様子の変化を早く拾うのも訪問看護の役目。徘徊や不眠が増えたとき、主治医やケアマネに橋渡しして、対応を早められます。家族だけで抱える状態を、少し緩められます。
ターミナルケア・看取りでの役割
終末期は、がん末期などで医療保険に切り替わることが多い場面です。痛みのコントロールや、家族の心の支えが中心になります。
正直に言うと、看取りは家族の覚悟と体制の両方が要ります。24時間対応のある事業所なら、夜中の急変にも電話で看護師がつながる。「最期は家で」を支えるには、この体制が前提だと私は考えています。
家族の負担を減らすレスパイトの視点
見落とされがちですが、訪問看護は家族の休息にもつながります。専門職が定期的に入ることで、家族が「全部一人で」という状態から解放されます。
ケアの不安を相談できる相手がいるだけで、介護は続けやすくなる。訪問看護そのものはレスパイト目的のサービスではありませんが、結果として家族を支える効果は大きいです。
訪問看護で対応できないことと相談先

できることばかり書くのはフェアではありません。訪問看護にも限界があります。
対応できない部分を先に知っておくと、別のサービスと組み合わせて穴を埋められます。
サービスの限界とその際の対処法
買い物・掃除・調理といった生活援助は、訪問看護の仕事ではありません。これは訪問介護(ホームヘルパー)の領域です。
また、訪問は基本的に決まった時間に行うもので、常に家にいるわけではありません。常時の見守りが必要なら、訪問介護や通所サービス、施設の検討も含めてケアマネと組み立ててください。一つのサービスで全部はまかなえません。
小児・障害児への訪問看護の利用方法
訪問看護は高齢者だけのものではありません。医療的ケアが必要な子どもにも使えます。
ただし子どもは介護保険の対象外です。多くは医療保険を使い、主治医の指示書をもとに訪問します。小児に対応できる事業所は限られるので、得意とするステーションを地域の相談支援や病院を通して探すのが現実的です。
訪問看護介護保険のよくある質問
最後に、現場で実際によく受ける質問に答えます。算定や運用の細かい所は、必ず担当ケアマネと事業所に確認してください。

よくある質問
迷ったら、まずは要介護認定の申請とケアマネへの相談から。ここさえ動かせば、あとは事業所が手続きを引っ張ってくれます。一歩目を踏み出してください。
