訪問看護の医療保険と介護保険の違いを徹底解説|費用・併用・優先順位

私は訪問看護ステーションの管理者として、初回相談で「どっちの保険になりますか」と毎週のように聞かれてきました。ここを間違えると費用も訪問回数も変わります。
この記事では、どちらが適用されるかの判断基準、優先順位、併用できるケース、費用の差、申請から利用開始までの流れまで、現場で実際にやり取りしている内容を整理します。
訪問看護の医療保険と介護保険の違いを最初に結論で解説

最初に大枠です。原則として、訪問看護は医療保険か介護保険のどちらか一方で算定します。同じ訪問サービスに両方を同時に当てることはしません。
そもそも訪問看護とは(受けられるサービスと訪問する人)
訪問看護は、看護師などが自宅へ伺い、医師の指示のもとで療養上のお世話や診療の補助を行うサービスです。病状の観察、点滴や注射などの医療処置、服薬管理、床ずれの手当て、リハビリ、看取りの支援まで幅広く対応します。
訪問するのは看護師が中心ですが、ステーションによっては理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も訪問します。誰が来るかは指示書とケアプランの内容で決まります。
医療保険と介護保険ではどちらが適用されるかが分かれる
分かれ目はシンプルです。介護保険の訪問看護は、要介護・要支援の認定を受けた人が基本の対象になります。
一方、医療保険の訪問看護は40歳未満でも医師の指示があれば対象になり得ます。要介護認定がない人も含まれます。
訪問頻度や利用回数にどう差が出るか
ここが実利用でいちばん効いてくる部分です。医療保険の訪問看護は、原則として週3回までという利用目安があります。
介護保険には、この「週○回まで」という全国一律の上限はありません。ケアプランと要介護度ごとの支給限度額の範囲で組み立てます。
| 項目 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 要介護認定がない人、40歳未満、特定の疾病・状態の人 | 要支援・要介護の認定を受けた人 |
| 訪問回数の上限 | 原則週3回まで(例外あり) | 全国一律の回数上限はなし(支給限度額の範囲) |
| 1回の時間 | 30〜90分が一般的 | ケアプランで設定 |
| 自己負担 | 年齢・所得区分で1〜3割 | 原則1割、所得に応じ2〜3割 |
どちらの保険が使われるか決まるルールと優先順位
利用者本人が選ぶのではなく、年齢・認定・病気で優先順位が機械的に決まります。ここを押さえると相談がスムーズです。

介護保険が適用される場合(要支援・要介護の人)
65歳以上の人は、原則として介護保険が優先されます。要介護・要支援の認定を受けていれば、訪問看護も介護保険の枠で利用します。
つまり認定を持っている高齢者は、まず介護保険と考えて大きく外れません。
医療保険が適用される場合(年齢・疾病・状態の条件)
医療保険になるのは、要介護認定がない人や40歳未満の人です。子どもや若い世代で医師の指示が出れば、医療保険で訪問看護を受けます。
加えて、後で説明する特定の疾病や状態に当てはまる人は、認定があっても医療保険が優先されます。
特定疾病・別表7・別表8など対象になる病気とは
40歳以上65歳未満の人は、介護保険で定める特定疾病があると介護保険が優先されます。逆に、別表7に挙げられる重い疾病や別表8の状態にあたると、認定の有無にかかわらず医療保険の訪問看護が優先される仕組みです。
末期の悪性腫瘍や神経難病などが代表例です。現場では、この別表に該当するかどうかを主治医に確認するところから始めます。該当すれば回数の制約もゆるくなります。
特別訪問看護指示書が出たときの切り替え
普段は介護保険で訪問している人でも、急に状態が悪化した時などに医師が特別訪問看護指示書を出すと、一定期間だけ医療保険に切り替わります。
この指示書があると、医療保険の週3回の枠を超えた毎日の訪問も認められます。点滴管理や急性増悪のときに使う、現場でとても重要なカードです。
医療保険と介護保険は併用できる?認められる具体的ケース
「両方使えるんですか」とよく聞かれます。原則は一方だけ。ただし条件付きで切り替わる・併存するケースはあります。

原則はどちらか一方という考え方
同一月・同一の訪問看護に対し、医療保険と介護保険を同時には算定しません。基本は「この人は今、どちらの保険か」を一つに決めて運用します。
併用が認められる代表的なパターンの実例
実例でいうと、普段は介護保険で週2回訪問している要介護の方が、肺炎で状態が悪化したとします。主治医が特別訪問看護指示書を出せば、その期間だけ医療保険に切り替わり、毎日訪問できます。指示期間が終われば介護保険に戻る、という流れです。
このように「同時に両方」ではなく「期間や状態で切り替わる」のが実態です。私の経験でも、ターミナル期や急性増悪のときにこの切り替えを使う場面が圧倒的に多いです。
保険を切り替えるタイミングと手続きの注意点
つまずきやすいのは、要介護認定が下りたタイミングです。それまで医療保険で訪問していた人が認定を取ると、原則その時点から介護保険に切り替わります。
認定は申請日にさかのぼって有効になるため、月の途中で保険が変わることがあります。レセプトを分けて処理する必要があり、ここはステーション側も神経を使う部分です。
正直に言うと、利用者さん側が気にしすぎる必要はありません。どの保険になるかはステーションとケアマネジャーが整理します。ただ「認定が下りたら保険が変わる」ことだけは知っておくと、費用の変化に驚かずに済みます。
訪問看護にかかる費用と自己負担額の違い

費用は「どちらの保険か」と「自己負担割合」「回数」で決まります。同じ訪問でも保険が違えば請求の仕組みが変わります。
介護保険の自己負担割合と費用のめやす
介護保険の自己負担は原則1割、所得に応じて2割または3割です。
介護保険には要介護度ごとに月額の支給限度額があります。例として、要支援1は50,320単位、要介護5は362,170単位と公表されています(掲載時点の例)。この限度額の中に、訪問看護だけでなくデイサービスなど他の介護サービスも入ります。
医療保険の自己負担割合と基本療養費
医療保険の自己負担は年齢・所得区分で1〜3割です。そして介護保険のような月額の支給限度額はありません。
1回の訪問時間は30〜90分が一般的で、重症などでは90分を超える扱いもあります。回数の目安が週3回までなので、費用の天井は介護保険より読みやすい面があります。
| 観点 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 自己負担割合 | 1〜3割(年齢・所得区分) | 原則1割、2〜3割 |
| 月額の支給限度額 | なし | 要介護度ごとにあり |
| 支給限度額の例 | — | 要支援1:50,320単位/要介護5:362,170単位 |
高額療養費・高額介護サービス費など負担を軽くする制度
自己負担が一定額を超えたとき、医療保険なら高額療養費、介護保険なら高額介護サービス費で払い戻しが受けられます。所得区分ごとに上限が決まっています。
私の経験上、ターミナル期に毎日訪問が必要になると窓口負担がかさみます。こうした制度の対象になることが多いので、市区町村の窓口や加入する保険者に早めに相談しておくと安心です。
自費で利用する場合の考え方
保険の回数枠を超えて訪問してほしい、保険の対象外のことを頼みたい、という時は自費(全額自己負担)での訪問になります。料金はステーションごとに設定が異なります。
保険と自費を組み合わせる形も可能です。ただ自費は割高なので、まず保険の枠を最大限使い切る組み方をケアマネジャーと相談するのが現実的です。
申請から利用開始までの流れと関係者の役割分担
訪問看護は一人で完結しません。主治医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションの三者が連携して動きます。

ケアマネジャー・主治医・訪問看護ステーションの連携
役割をざっくり分けると、主治医は指示書を出す人、ケアマネジャーは介護保険のケアプランを作る人、ステーションは実際に訪問してケアする人です。
| 関係者 | 主な役割 |
|---|---|
| 主治医 | 訪問看護指示書を発行し、医療面の方針を決める |
| ケアマネジャー | 介護保険のケアプラン作成、サービス調整(介護保険の場合) |
| 訪問看護ステーション | 指示書に基づき訪問・ケアを実施、医師へ報告 |
介護保険の人はケアマネジャーが窓口、医療保険の人はステーションが直接窓口になることが多い、と覚えておくと相談先を間違えません。
訪問看護指示書の種類と発行までの流れ
訪問看護を始めるには、主治医の指示書が必須です。通常は訪問看護指示書、急変時などは特別訪問看護指示書、精神科の場合は精神科訪問看護指示書、と種類が分かれます。
流れとしては、ステーションが主治医へ指示書を依頼し、医師が発行、その内容に沿って訪問計画を立てます。指示書がないと訪問は始められません。ここが止まると利用開始も遅れます。
利用者・家族が踏む具体的なステップ
利用者・家族が実際にやることは、それほど多くありません。順番に整理します。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1 | まず誰に相談するか決める(介護保険なら地域包括支援センターやケアマネジャー、医療保険なら主治医やステーション) |
| 2 | 主治医に訪問看護を使いたい意向を伝える |
| 3 | 訪問看護ステーションを選び、契約・面談を行う |
| 4 | 主治医が指示書を発行する |
| 5 | 計画に沿って訪問看護がスタート |
迷ったら、まず主治医かお近くのステーションに電話する。これがいちばん早いです。あとは専門職が保険の振り分けまで整理してくれます。
ケース別に見る保険適用の特殊ルール(現場目線の解説)
通常ルールから外れる代表的なケースを3つ挙げます。ここを知らないと損や手戻りになりやすい部分です。

精神科訪問看護の保険適用の特殊ルール
精神科の訪問看護は、精神科訪問看護指示書という専用の指示書が必要で、医療保険で算定されるのが基本です。精神疾患を主たる理由とする訪問は、要介護認定があっても医療保険側で動くことが多くなります。
一般の訪問看護とは指示書も算定区分も別、と理解しておくと混乱しません。
小児・難病患者への訪問看護のルール
小児は介護保険の対象年齢ではないので、医師の指示があれば医療保険の訪問看護を利用します。40歳未満でも対象になり得るのはこのためです。
難病で別表7などの重い疾病に該当する場合は、回数の制約がゆるみ、医療保険で手厚い訪問が組めます。複数のステーションが関わる形も認められやすくなります。
ターミナルケア・看取り期に変わる保険適用
末期の悪性腫瘍は別表7に含まれ、認定の有無にかかわらず医療保険の訪問看護が優先されます。看取り期に毎日訪問できるのは、この枠組みのおかげです。
普段は介護保険でも、急変時に特別訪問看護指示書が出れば医療保険で毎日訪問に切り替えられます。実際、看取りが近づくと回数を一気に増やす場面が多いです。費用が重くなりやすいので、高額療養費の対象になるかも合わせて確認しておくと安心です。
失敗しない訪問看護ステーションの選び方と利用のコツ

保険が同じでも、ステーションによって対応の幅は大きく違います。管理者目線で、見るべき点と頼めないことを正直にお伝えします。
比較するときに見るべきポイント
| 見るところ | 確認の理由 |
|---|---|
| 24時間対応の有無 | 急変や看取り期に夜間も連絡が取れるかで安心感が変わる |
| 対応できる医療処置 | 点滴・看取り・人工呼吸器など、必要な処置に対応できるか |
| リハビリ職の在籍 | 理学療法士などによる訪問が必要か |
| 精神科対応の可否 | 精神科訪問看護を希望する場合は専門の体制が必要 |
| 主治医・病院との連携実績 | 指示書のやり取りや報告がスムーズか |
私が一つ選ぶなら、24時間対応です。日中の対応だけのステーションは、夜間の急変で結局救急に頼ることになりがちです。在宅で最期まで過ごしたい人ほど、ここは妥協しないほうがいい。
訪問看護で受けられないこと・サービスの範囲外
勘違いされやすいのが、訪問看護は家事代行ではないという点です。掃除や買い物、調理といった生活援助は訪問看護の役割ではありません。それは訪問介護(ホームヘルパー)の領域です。
訪問看護はあくまで医師の指示に基づく医療・看護が中心です。家事のサポートも必要なら、訪問介護と組み合わせる形になります。ここを分けて考えると、サービスの設計がぶれません。
訪問看護の医療保険と介護保険の違いに関するよくある質問
よくある質問
最後にひとつ。保険を自分で選ぼうと悩む必要はありません。年齢と認定と病気で決まる仕組みなので、まずは主治医かステーションに連絡を。あとは私たち専門職が整理します。

- 厚生労働省 訪問看護関連資料(PDF)
- careteam.jp 訪問看護コラム
- shimpre-houkan.com 医療保険と介護保険の違い
- nurse-at.jp 訪問看護の基礎知識
- あさひ安心介護 介護保険コラム
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